ギンザノヒト

ダサくていいじゃない

グレイテスト・ショーマンを見てきた

はじめに

見てきました。IMAXで。最高でした。

日曜日に、昼食を食べるためだけに外出してしまい、そのまま帰るのもなーと思ってドトールに寄って、ちょうどいい時間に上映する回があったのでそのまま映画館へ。カップルに両脇を挟まれる中、ワインを飲みながら一人泣きそうになりました。終わった後はCDショップに直行してサントラ購入。

酒飲みながら観たせいもあるかもだけど、めちゃめちゃいい映画だと思うので、感想まとめようと思います。

ネタバレのない感想

この作品は、主人公のサクセスストーリーでもなければ、ラブストーリーでもない。完全に「俺たちは生きてるぞ! お前は死んだ顔して何がやりたいんだ?」を観る人に投げつけてくる、パワー満載の映画です。劇中の登場人物の希望、絶望、夢、情熱、諦め、興奮が楽曲によって美しく力強く伝わってくる。観る人を惹き込み、その感情たちに巻き込んでくる。そして、観終わったあと、強い感動ではなく、余韻に浸るような、「明日から強く生きよう」というパワーを静かに感じられる、そんな映画。商業主義により擦り減り、社会に抑圧され、夢よりも現実を生きる人に、「それで楽しいか?」と投げかけ、希望を与えてくれる、そんな映画。僕は、この映画見て、仕事辞めたくなりました。

観終わった直後よりも、余韻の方が凄いので、サントラ買いたくなると思います。あと、絶対音響がいい映画館で観た方がいいっす(全員言ってる)。

ネタバレありの感想

※ネタバレあります

劇中歌参照しながら振り返っていきます。

 

The Greatest Show

The Greatest Show

イッチバン最初、いきなりこの曲から始まる。その力強さに圧倒され、すでに僕はちょっと泣きそうでした(全くストーリー知らなかったけど)。すげえショーが始まる!を予感させる。んでもって突然の夢オチ。この時点では、この男の子がフィニアスだって分からないっすよね。すぐ分かるわけだけど。

このあと、盗みを働きながら生きながらえる姿が描かれるわけですが、その生活が長かったから平気で南シナ海に沈んだ船を担保に大金を借りたりするのかな、という、仕方ないとはいえ主人公らしからぬ行いが垣間見えます(僕が1番驚いたのは、それを受け入れるチャリティ)。

A Million Dreams

A Million Dreams

え、キミ歌上手すぎだろ!ってまずビビった。歌声が綺麗すぎる。このとき、少年フィニアスは、チャリティにグレイテスト・ショーを見せてるんですよね、最高。

‘Cause every night I lie in bed
The brightest colors fill my head
A milion dreams are keeping me awake

少年フィニアスのここ、最高すぎる……。歌声の透明感と、希望に満ち溢れた歌詞。昔の、色々夢想しては寝付けなかった夜を、観る人に思い出させる。ただただ美しい。

このあたりで、あーこれP.T.バーナムなのか、みたいなのが何となく分かり、突然の大人バージョン登場で全てがわかる。このときのフィニアスは、チャリティだけのグレイテスト・ショーマンなんですよね。チャリティは、格式ばって抑圧される家庭環境の中で、ショーを見せてくれるフィニアスに惹かれるわけです。

A Million Dreams (Reprise)

A Million Dreams (Reprise)

ここも感動的。2人の娘たちには、夜眠れなくなるほどの夢や希望がある。それはまるで少年フィニアスと同じなわけです。こんな夢に溢れた娘たちに、自分のせいで現実を突きつけてしまう。そんなことを考えたフィニアスは、ここで「成功」を誓ったはずです。このときはまだ、娘たちに夢を見させることを考えてたはず。その手段としての富と名声だったはずが、途中ですれ違ってしまう。

僕がこの映画で1番好きなセリフは、この後娘たちに言われる「生きているものが見たい、だって皆死んでるもん」てきなセリフです(1回しか見てないからちゃんと覚えてない)。ここがこの映画の本質だと思う。血が通った迫力が欲しい。これめっちゃ共感できるし、考えさせられませんか。何でもインスタントに揃い、娯楽に溢れかえった現代において、生きているものって、なんなんだ。死んだ顔してインスタントに楽しむのって、本当に楽しいんだっけ。

ここで、フィニアスは“面白人間ショー“を考えつくわけです。このあたり、僕の中で結論が出てないんですが、観たときの感想てきには「ぜってー金のことしか考えてねーな」って感じでした。あらゆる“面白人間“をスカウトするにあたり、誘い文句は「君は君として受け入れられるはずだ、勇気を出せ、任せろ」でした。胡散臭さがある。にもかかわらず、このあとのCome Aliveは強いメッセージ性がある。ここが謎。上っ面だけでこんなメッセージ放てるなら、相当の詐欺師だと思う(劇中でも自分で詐欺師って言ってるけど)。

Come Alive

Come Alive

生き返れ。こんな強いメッセージないっすよね。社会に潰されて、自分を肯定できなくて、縮こまって。それでいいのか。このメッセージに動かされ、レティ達は舞台に立ち、今までとは違う世界に飛び込んで、2度と戻れなくなってしまう。夢と希望を持つようになる。その姿に、観ている人も夢と希望を持ち、笑顔で帰る。このへん、凄く薄っぺらくしてしまうと、差別的笑いに見えるところだと思いますが、間違いなく劇中の観客も熱狂し、生き生きしている。その見せ方が、曲のメッセージ性の厚みも相まって上手かったんじゃないかと個人的には思います。この曲聞くとマジで仕事辞めたくなる。

忘れちゃいけないのは、このときフィニアスは金を稼ぐためにいろいろ盛りに盛ってるところです。詐欺師の片鱗を見せてる。

The Other Side

The Other Side

Other Side。富と名声・社会的地位 vs 魂の充足。フィリップを引き込んでおきながら、完全に立場が入れ替わる。ここでフィニアスは完全に社会的地位を取りに行くのが、残念っぷりがすごい。まあでもこの頃、エリザベス女王に呼ばれても全員で乗り込んでたんですよね。

Never Enough

Never Enough

  • Loren Allred
  • サウンドトラック
  • ¥250

初見では理解が追いつかなかったんですけど、なんでジェニーはフィニアスの誘いに乗ったんですかね。「自分は偽物しか見せられないけど、1度くらい本物を見せたい」てきな誘い文句だったと思うんですけど。わからん。どれだけ賞賛されても満たされないジェニーが、へんなことやって旋風を巻き起こしたフィニアスに惹かれたんすかね(雑)。

All the shine of a thousand spotlights
All the stars we steal from the nightsky
Will never be enough
Never be enough
Towers of gold are still too little
These hands could hold the world but it'll
Never be enough
Never be enough

For me

映画館で聞いたときは震えました。あまりにも悲しすぎる。孤独が溢れてました。富と名声という、フィニアスが求めるものを持ちながらも、圧倒的な孤独。行きつく果てが見える。ジェニーは、この孤独を理解して2人だけの世界を作ってくれることをフィニアスに期待したわけですが、フィニアスは金のなる木としてしかジェニーを見れなかった。それに気づいたジェニーは、更なる孤独に襲われ、姿を消す。可哀想すぎる。

This Is Me

This Is Me

  • Keala Settle & The Greatest Showman Ensemble
  • サウンドトラック
  • ¥250

主題歌らしい。正直、映画館で見たときは、まあ普通、って感じでした。ここが刺さるかどうかって、観てる人がフィニアス側にいるか、レティ側にいるかで変わると思う。ジェニーという社会的地位生成ツールを手に入れたフィニアスに、少なからずイラついていたので、凄く入りやすい文脈だったけど、あからさま過ぎた気もする。個人的には、Never Enoughの儚さに感動した直後だったので、まあそうなるよね、くらいの印象でした。

フィニアスはこのタイミングで、チャリティを始め巻き込んで来た人たちのグレイテスト・ショーマンから、ただの興行師になるわけだ。Other Sideに行ってしまう。

Rewrite the Stars

Rewrite the Stars

ここ、完全に結ばれたと思ったんですけど! まさかフラれるとは。歌詞見ると、対比的で面白いなーと後から思いました。

Tightrope

Tightrope

  • ミシェル・ウィリアムス
  • サウンドトラック
  • ¥250

フィニアスの影と踊ってた瞬間に消えるシーン、ヤバすぎる。フィニアスの夢ならたとえ間違ってたとしても一緒に見たい、夢を見せて欲しい、ついていきたい。そう思っていたチャリティが、フィニアスを見失う。というか、フィニアスがチャリティを見失う。Million Dreamsリプライズのシーンで、チャリティは「この幸せがずっと続きますように」って願ってたのに、ついに崩れる。綱渡りから落っこちる。

From Now On

From Now On

正直ピンとこなかった。フィニアス、これだけ散々引っ掻き回しといて、なんで戻ってこれるんだよ、ってなった。それだけ、レティ達にとって希望だったのかなー。大切なものは失って初めて気づく的な。ちょっと良かったシーンは、散々批判して来た批評家が酒を分けて「復活を祈るよ」って言ってたところ。一度全てを失ったフィニアスなら、盛りに盛った詐欺のサーカスではなく、本物のサーカスができると期待してたのかな。

I drank champagne with kings and queens
The politicians praised my name
But those are someone else's dreams

ここは好き。誰かの夢を生かされてた。そういうこと、ありますよね。

The Greatest Show

The Greatest Show

あえてもう一度。まさにグレイテスト・ショー。生きて、生きている本物を見せて、見るものを生き返らせ、自分が生きる糧にする。

フィリップがステージに立ったのも、よかったなーって感じ。「僕は何もしないよ」「みんな何かするのよ」から、傍観者をやめて生を歌う。

思うところ

サクセスストーリーでもなく、ラブストーリーでもなく、「俺たちは生きてるぞ! お前は死んだ顔して何がやりたいんだ?」を突きつけてくる。見た人は、フィニアスにも、フィリップにも、レティにもなれる。

フィリップの話が出てきてややこしい、みたいな話もあるけど、観てる人がどの位置にあたるかといえば、たぶんフィリップなんだと思うのです。始めは離れたところから面白がって見てるだけ、自由に憧れつつも今の生活を失えない。でも、そこから飛び出せば、それじゃ満足できないところに行けるんじゃないの?って、そう言われてる気がする。変わるのは、自分次第だよ。

そんな生き方、できないっす……。したいっすけどね……(中途半端だとアンにフラれる)。

社会に負けそうになって、自分を見失いそうになったときに、見たい映画になりそう。